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最高の棋譜が至極の物語に!『先崎学&中村太地 この名局を見よ!20世紀編』

終わるのが惜しい、と思いながら読みました。

すべての将棋ファンにおススメの一冊です!

 

先崎学&中村太地 この名局を見よ!  20世紀編 (マイナビ将棋BOOKS)

先崎学&中村太地 この名局を見よ! 20世紀編 (マイナビ将棋BOOKS)

 

 

「将棋指しが残すのは、つまるところ棋譜だけである」

これは先崎九段が自著「先崎学の浮いたり沈んだり (文春文庫)」で村山聖九段を偲んで書いた一節です。

大きく頷くところではありますが、棋譜にいい話が乗ると至極の物語になると感じた一冊でした。

 

名局と名エピソード

全部で13局が収録されています。

そのうち印象に残った2局について記します。

 

まずは第2局。大山康晴名人ー加藤一二三八段(肩書は当時)

加藤九段が20歳で名人に挑戦(!)したときの対局です。

七番勝負の1戦目は加藤九段が快勝し、迎えた2戦目。

20歳の新名人誕生か?!というムードの中で行われた一局でした。

 

この名人戦は、加藤九段が先勝するも、大山名人の壁が分厚くて4連敗を喫した、という認識でした。ところがこの第2戦目を見ると、その認識が間違っていたことが分かりました。

加藤九段が非常に惜しいところまで迫っていたのです。それが故に、大山名人の壁の厚さも再認識しました。

 

これを現代に置き換えると、いま16歳の藤井聡太七段が4年後に名人挑戦を果たし、羽生名人が迎え撃つ、という構図でしょうか。

もしそんなことが起きたらすごい盛り上がりを見せることでしょう。

 

半世紀後に加藤九段が「ひふみん」の愛称でTVに引っ張りだこだと知ったら、当時の将棋ファンは驚くでしょうね(笑)

 

 

もう一つは第7局。中原誠王位ー米長邦雄棋王(肩書は当時)

王位戦七番勝負の最終局でしかも千日手指し直し局。それだけで番勝負の壮絶さがうかがえます。

 

この対局は、将棋の中身も面白いのですが、中原永世十段と米長永世棋聖の勝負への姿勢についての言及が印象的でした。

 

一般的には

  • 中原永世十段:「自然流」で泰然自若
  • 米長永世棋聖:「泥沼流」で勝負にこだわる

というイメージでしょう。

 

しかし先崎九段が語るにそのイメージは逆で、中原永世十段の勝負への辛さに、米長永世棋聖が必死に対抗していたとのこと。

本の中ではそのことがもっと生々しく語られており、ぜひ実際に読んでみていただきたい部分です。

 

次回作にも期待!

他の11局も、どれも読み応え十分です。

最終局は黄金カードである谷川ー羽生戦です。ここまでが20世紀編でした。

21世紀編の予定もあると伺いましたし、期待しています!

 

プロの対局は、物語を知ることでより深く知ることができます。

最近ファンになった方は、この一冊を読むことでより現代のプロの対局を楽しむことができると思います。

 

先崎学&中村太地 この名局を見よ!  20世紀編 (マイナビ将棋BOOKS)

先崎学&中村太地 この名局を見よ! 20世紀編 (マイナビ将棋BOOKS)

 

 

それではまた