将棋棋士 遠山雄亮のファニースペース

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AbemaTVトーナメント決勝戦で見せた、藤井聡太七段の緩急自在な指しまわしと妙手△7七歩について

昨日の夜は、叡王戦パラダイスAbemaTVトーナメントと、将棋番組を観て過ごしました。

AbemaTVトーナメントは決勝戦が行われ、藤井聡太七段が佐々木勇気六段を2勝1敗でくだして優勝しました。

 

緩急で翻弄

藤井七段が勝った第2局・第3局は、緩急をつけた指しまわしに魅了されました。

対局者に加え、解説者の渡辺棋王や視聴者まで翻弄しているかのようでした。

 

まずは第2局。

(太字は実戦の指し手)

 

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(図面は全てモバイル中継より)

 

▲2六飛と浮いて△3六歩を消してから▲3四歩かな、と思って観ていました。

しかしここで▲3四歩△3六歩▲2五桂!と強攻。

 

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桂損するのでかなり思いきった攻め。しかしうまい攻めでした。

以下△2五同歩▲同飛△3二銀▲2七飛△3四金と進み、

 

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桂を捨てたからには、▲2二歩や▲2三歩と急いで攻めて駒損を回復する手が第一感です。

しかし藤井七段は▲2二飛成△3三角▲2六竜とペースダウン。この順では桂を損して竜を作っただけ、かと思いました。解説の渡辺棋王も同様の見解だったと記憶しています。プロ的には驚きの順でした。

 

しかしこの竜が強力で、なんと、このあとわずか十数手で佐々木六段を投了に追い込むことに。

手の良し悪し以上に勝敗に直結した緩急でした。

 

そして1勝1敗で迎えた第3局。

 

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後手の藤井七段が猛攻を仕掛けて迎えた図。

当然ここも△7七歩と攻め込むのかと思ったのですが、△4二角▲7六銀打△8一飛とペースダウン。

 

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この感想は気持ちのわかるところで、観ていて佐々木六段にチャンスがきたと思いました。

 

しかし▲7五歩△8六歩▲7四歩△8七歩成▲同銀△7七歩と藤井七段が再びペースアップすると、景色が急に変わりました。

 

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打たれてみると厳しい一着でした。残り時間がほぼ残っていなかった佐々木六段は混乱した様子のなかで▲同桂と取りますが、△9七歩成▲同歩△同角成で一気に先手陣が崩壊。ほどなく藤井七段の勝ちとなりました。

 

思わぬところでペースを緩め、いきなりペースを上げて攻めてくる、この組み合わせで2局とも一気に駆け抜けた印象でした。

これもまた藤井七段の強さなのでしょう。

△7七歩は優勝を彩る一着に

緩急をつけて相手を惑わせるというのは、人間同士の将棋ではテクニックとされています。

しかし藤井七段の場合、テクニックを意識するのではなく、あくまで手の善悪を基準に指しているようにみえます。

特に最後の△7七歩は、調べてみるとかなりの好手で、たった一つの歩が、相手陣を切り裂きました。この一着で優勝を手繰り寄せたと言っても過言ではないでしょう。

 

ちなみに△7七歩のあとの変化は、

実戦の▲同桂△9七歩成▲同歩△同角成

▲7七同玉は△8六金▲同銀△同角。

▲8八玉は、△9七歩成▲同歩△8七飛成▲同玉△8六金▲8八玉△8七銀▲7九玉△7六金。

▲8八玉が一番難しいようですが、それでも攻めがつながっています。

有段者向けの解説でした。

 

見どころいっぱいの決勝戦。堪能しました。

AbemaTVでも振り返ることができますし、全棋譜と解説はモバイル中継にもあります。

まだ観ていないという方は、ぜひご覧ください!

 

 

それではまた