将棋棋士 遠山雄亮のファニースペース

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棋聖戦における豊島棋聖の角換わりでの工夫について

5回目のタイトル挑戦にして初戴冠となった豊島棋聖。

羽生竜王の通算タイトル100期を阻止したことでも話題となりました。

 

今回は角換わりシリーズでした。

5局中3局が角換わり。また1局は角換わりの出だしから雁木に進んだものでした。

その3局中2局を豊島棋聖は制し、特に最終局は後手で貴重な勝ち星をあげました。

 

角換わりを制したものが棋聖を制する、というシリーズでしたが、豊島棋聖の随所に見せる研究の深さには驚きを覚えました。

どこがどうすごいのか、ここからわかりやすく解説していきます。

 

角換わりの一大テーマ図

図は現代角換わりの一大テーマ図の一つでもあり、 今シリーズで度々登場しました。

 

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第1局と第5局で出現、第4局では手番が先手で出現しています。

(以下、色付きの符号は実戦の指し手)

 

第1局は羽生竜王が後手で△6五歩と仕掛けました。

対して▲同歩△同銀▲5八玉が前例があるとはいえ大胆な一着。

 

 

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私自身も有力と認識していましたが、実戦で指しこなすのは難しい類の手だと思っていました。しかしこのあと豊島棋聖は羽生竜王の攻めをうまくいなし、素晴らしい指しまわしで快勝しました。

 

第4局は後手の豊島棋聖があえて1手パスをして(6二の金を5二→6二と持ってきた)、第1図で先手の手番になっています。

この後も後手は玉の往復でパスを繰り返して第3図。

 

 

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後手だけ陣形に変化がなく、先手は玉が入城するという変な図になりました。

しかしこれが豊島棋聖用意の作戦。

 

もし第1図の前に1手パスをしないと、ここで後手の手番となり、いまが一番バランスのいい陣形なのに、それを崩さざるを得ません。パスをしたことで先手に手番を渡したのが豊島棋聖の工夫でした。

実戦は▲4五桂と攻めましたが、後手陣はバランスが良く、素早く反撃に移ることに成功。形勢は互角ながら後手番としては満足の戦いとなりました。

 

この第4局は羽生竜王が制して豊島棋聖の研究は実らず。

そして第5局で三度第1図を迎えます。

今度は△4一飛という驚きの一着を豊島棋聖が指しました。

 

 

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あえて飛車を玉の下に持ってくるという、珍形とも言える格好です。

新手でもあり、「玉飛接近すべからず」の格言に逆らった手でもあり、なかなか思いつかない手です。

しかしここから▲7九玉△4四歩▲4五歩△5二玉と進むとその意味がわかります。

 

 

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飛車の威力で4筋からの先手の攻めを食い止めるのが真の狙いでした。

この局面の前例の1つは私の対局で、4月の対村山七段戦でした。

ただ▲村山-△遠山戦は第1図から△4四歩▲7九玉△4一飛▲4五歩△5二玉と進行したので、微妙に手順が違います。

 

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このときは後手の私が第5図からすぐに間違えて完敗でしたが、形勢は悪くないものでした。

ただ△4四歩には▲7九玉ではなく▲4五歩と仕掛けられるのが後手は怖いところ。

 

 

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この図は5月の▲遠山ー△北島七段戦で出現しました。以下は△同歩▲同銀△5五銀▲2四歩と進展。難しい将棋でしたが、中盤で優位を築いて快勝しました。

 

 

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その進行を避けて第5図に進めるために、△4四歩の前に△4一飛として争点をなくしたのが豊島棋聖の工夫だったのです。

 

第5図のあとは羽生竜王が意欲的な角打ちを見せるも不発に終わり、豊島棋聖の圧勝でした。

と書くと簡単ですが、実際は上記の私のように(苦笑)、玉飛接近の格好はミスが出やすく、豊島棋聖が一局を通じて素晴らしい指しまわしを見せました。

 

シリーズ全5局の棋譜は、産経新聞紙上の観戦記、そしてモバイル中継でご覧ください!

将棋連盟ライブ中継|日本将棋連盟

 

アマチュアにもお勧めの「一段飛車+二段金」!

第1図の「一段飛車+二段金」は将棋ソフトが流行させたことで知られていますが、いまや角換わりでは完全にこの形が主流になりました。

むしろ角換わり以外にも、この形は影響を与えています。

 

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それではまた