前々回、前回の記事の続きです。
今回は△7七同飛成の周辺から、コンピュータ将棋の評価値について書いていきます。
当日のニコ生の放送で、将棋ソフトは68手目△6三同金を悪手と判定していました。
(以下、色付きは実戦の指し手)
中継のコメントを見ると、この段階での検討ではまだ本命視されていません。
ソフトも控室も、▲2二と△4八歩成▲7二銀に△8六飛から寄せにいく順を有力とみていなかったからです。
ただ前回の記事で書いたように、藤井聡太七段も石田直裕五段も、この時点で△7七同飛成に気がついていたようです。
本当に将棋ソフトは気が付かないのか?
自宅のPC(電王戦で使われたくらいの性能)でAperyを元に、5分で10億局面くらい読ませて検証しました。
結果としては、やはり68手目△6三同金の時点では先手に評価値がふれます。
その後もしばらくは△7七同飛成が読みに入ってきません。
73手目辺りでようやく読みに入ってきますが、まだ良さに気が付きません。
75手目▲7七歩でようやく△7七同飛成の良さに気が付き、後手に評価値がふれました。
数手後の好手に気が付かないところに、その時々の評価値を信用しすぎる危うさが表れています。ここはそれがよく現れた場面といえます。
ただしソフトの形勢判断が正しいことが多いのもまた事実です。
体感では99%は正しいと感じます。
プロもお手本が欲しいので、私も評価値はおおいに参考にしています。
ただし評価値は、
絶対ではなくあくまで指標
であることを忘れてはいけません。
それを教訓とさせられる「△7七同飛成」でした。
よく「飛車を振ると評価値が落ちる」と言われていますが、振り飛車には膨大な変化があり、戦いが始まるのもはるか先のこと。
その一瞬の評価値についての言及には、話題性はあるものの、真実はないと考えてよいでしょう。
もちろん「振り飛車が終わった」わけはありません。
藤井聡太七段のコメント
この「△7七同飛成」について藤井聡太七段がコメントを寄せています。
注目すべきはこのコメントです。
現状、最近のソフトは大変強いことは言うまでもないことですけれども、部分的には人間の方が深く読める局面もあると個人的には考えていたので、それが現れたのかなと思います
68手目△6三同金の局面は「人間の方が深く読める局面 」だったのでしょう。
人間の長所である
急所にフォーカスして計算を省略
これを藤井七段が生かして、△7七同飛成という名手を実現させたのです。
おわりに
3回にわたって△7七同飛成について書いてきましたが、今回でいったん区切りとします。
今月中に、本局の続きである竜王戦決勝T、そして王座戦挑戦者決定Tと、タイトル戦を目指す対局が組まれる可能性が高いようです。
私自身も楽しみですし、皆さんもぜひご注目ください!
中継は、私が編集長を務める将棋連盟ライブ中継アプリでご覧ください!
6月26日発売の藤井聡太全局集も、この結果次第ではより注目を集めそうです。
それではまた