定跡を覚えようとするとき、繰り返し本を読んだり何度も棋譜を並べているのに、なかなか頭に入らない――そんな経験はないでしょうか。
棋士の場合は将棋AIを用いて勉強をすることが多いのですが、ただ将棋AIの手を眺めるだけだったり、定跡をまとめるだけでは「勉強した気になっているだけ」という状態に陥りがちです。
受け身の学習は、どうしても記憶の定着が弱い。そこで私が昨秋から取り入れているのが、Googleの「NotebookLM」を使った学習法です。
NotebookLMとは
NotebookLMは、Googleが提供するAIを活用したノートツールです。自分でアップロードしたファイルをソースとして登録し、そこから質問・要約・整理などができます。
特徴的なのは、外部の情報ではなく「自分が用意した素材だけ」をもとに回答してくれる点です。余計な情報が混入しにくく、精度が安定しているのが強みです。
これが将棋と相性がいいのです。将棋の場合は専門的な知識や用語を必要とするため、ソースを各所から集めてしまうとノイズが多すぎて使い物にならないことが多いです。しかしNotebookLMなら自分でソースを提供して、そのソースだけでAIが答えを出してくれるので、ハルシネーション(嘘)の割合を非常に低く抑えられます。
言語化ファイルをソースとして活用する
そして今回、私は二枚落ちの定跡のひとつ「△5五歩止め」を言語化したファイルを作成しました。指し手の順序や意味、各局面での考え方を、できるだけ言葉で丁寧に書き起こしたものです。
なお定跡の手順は、旧来のものではなく、私がもっとも有力と考えている指し方を記載しています。
これをファイルにしてNotebookLMのソースとして読み込ませます。ファイル形式は多くのものに対応しています。メモ帳に記事をそのままコピペして、「.txt」で読み込ませてもいいです。
私はGoogleのドキュメントに様々な言語化を記し、NotebookLMにソースとして読み込んでいます。ドキュメントは同じGoogleのサービスなのでNotebookLMとの連携がよく、長い目で見ると使い勝手がいいのでおすすめです。
【追記】
スマホなどファイル化に手間がかかる媒体では、noteの記事URLをそのままNotebookLMのソースにしても大丈夫です。
Studioでフラッシュカードとクイズを自動生成する
NotebookLMには「Studio」という機能があり、読み込んだソースをもとにフラッシュカードやクイズを自動生成できます。
一度言語化したものを読んだ後に、この機能でクイズを解いていく流れが「能動的な学習」のポイントです。受け身で読むだけでなく、問われることで思い出そうとする能動的な学びが記憶の定着を促します。
実際に私も上記リンクをファイル化してフラッシュカードとクイズを試してみたところ、なかなかいい出来でした。定跡の各局面で「次にどう指すか」「なぜその手を選ぶのか」といった問いが生成され、自分の理解を確認しながら学べます。
将棋クイズの問題点とカスタムプロンプトの工夫
ただし、将棋のクイズを自動生成させると、いくつかの問題が出てきます。用語がおかしくなったり、符号がズレたりすることが少なくありません。
たとえば「▲7六歩」が「▲76歩」となっていたり、別の表現になっていたり、将棋特有の言い回しが崩れてしまうことがあります。これは学ぶ際のノイズとなって、小さいようで大きなストレスになります。
そこで私が実践しているのが、カスタムプロンプトを活用する方法です。NotebookLMでフラッシュカードやクイズを生成するときに表示される「希望するトピック」の欄に、将棋の符号や用語を正確に使うよう指示を入れておきます(プロンプトの内容は先ほどのリンク先で公開しています)。
これを入れることで、生成されるクイズの精度が大きく改善されます。
また、問題数を指示することで、急所となる部分を厳選して出題してもらえますし、問題の重複を防ぐこともできます。
(この辺りは2026年4月現在の状況であり、今後操作方法が変更になったり、使い勝手が向上する可能性もあります)
実際にやってみて
この学習法は、私が定跡を学ぶ際に実際に使っているものです。読む→問われる→理解を深める、というサイクルを自分のペースで回せるのが気に入っています。
実際にこの取り組みによって、知識の定着率が上がった手応えもあります。
まだ試行錯誤の段階なので、うまくいかないこともあります。カスタムプロンプトの精度向上については、引き続き模索中です。
NotebookLMは将棋学習を大きく変える可能性のあるツールだと感じています。もしかしたら、教材のあり方を一変させるかもしれません。活用方法は、これからも探っていきたいと思います。
そしてNotebookLMが将棋学習に有効となれば、言語化の重要性が格段に増します。その先に「将棋AIの示す手を言語化できる将棋LLM」が待っていると思うと、ワクワクする気持ちが湧き上がります。
感想やご意見があれば、ぜひXのリプライで教えてください。皆さんの実践例も聞かせていただけると嬉しいです。
追記
この記事を公開した翌日に、飛車落ち定跡の言語化もnoteに公開しました。
「令和の新定跡」をNotebookLMで学んでください。
それではまた