GWに開催されたコンピュータ将棋選手権。
最終日のニコ生解説を担当しました。
ご視聴いただいた皆さま、ありがとうございました。
感想
・全体の実力の底上げは著しい
・トップソフトの実力は急激には伸びてなさそうか
・角換わりが大流行、横歩取りが減少、矢倉は希少
・決勝リーグ、最終戦が消化試合でちょっぴりガッカリ
2日目は見学、3日目は解説で伺い、いつもながら楽しい大会でした。
お世話になった皆様、ありがとうございました。
名局、熱戦、好局、たくさんありました。
そんな中から、次の一手形式で印象に残る手を取り上げます。
厳選次の一手4問!
今回は二次予選から4局をピックアップ。
決勝リーグからはまた日を改めて。
1問目は優勝したHefeweizenの将棋から。
二次予選 ▲Hefeweizen-△Novice
圭=成桂、杏=成香
ヒント:歩を使った手筋
Hefeweizenは大会通じて素晴らしいパフォーマンスを見せました。
初出場ながら1次予選と2次予選は2位通過。
そして決勝リーグでは、1局余して優勝を決めました。
凄腕プログラマーがタッグを組むとこれほど強いのか、と衝撃的でした。
(Hefeweizenは、昨年の電王トーナメントに出場した2ソフト(準優勝のshotgunと人造棋士18号)の開発者がチームを作った)
正解:▲7二歩
以下△同玉は▲6一角△6二玉に▲4二竜で詰み。
△同銀は▲5一角△5二玉▲1五角△4一金打に▲4二角成△同銀▲4三金
この手が決め手です。
△同銀でも△同玉でも▲4一竜が強力な攻めです。
この将棋は横歩取り青野流でした。
ソフトは青野流ではかなり深くまで定跡を搭載しています。
この将棋もHefeweizenは69手目まで定跡だったようです。
2問目は前回大会優勝のelmoの将棋から。
奇手が現れました。
二次予選 ▲elmo-△妖怪Qhapaq
ヒント:玉の次に強い駒を詰ます
決勝リーグに進出した妖怪惑星Qhapaqとの一戦。
Qhapaqの猛攻を延々と受け止め、elmoが優勢になりました。
優位を決定づける一着は、見たことのない手で会場が沸きました。
正解:▲8一銀
これで飛車が詰んでいます。
入玉模様を見込んで大駒を確保した意味があります。
このまま優勢を維持するも、elmoは最後にバグで反則負け。
実力的には優勝してもおかしくなかったと思いますが、反則負け3つで二次予選敗退は残念でした。
3問目は鬼手を考えてください。
二次予選 ▲なのはー△大合神くじらちゃん
ヒント:飛車は逃げず、角をねじこみます
平凡に▲3八飛は、△4八角成▲同飛△2一飛で後手有利。
そこで先手が鬼手を放ちました。
後手の大合神くじらちゃんは決勝リーグに進出しました。
ユーザのマシンパワーを借りるというコンセプトで毎回出場されています。
大会会場から開発者自身がニコ生を配信しており、コアファンに人気です。
正解:▲3一角
これはなかなか見ない手です。
対して△同金が自然ですが、▲同とで、
△2八角成は▲4一と△同玉▲2一飛(王手馬取り)。
△3一同飛は▲2二飛成。
△3一同玉は▲2一金△4二玉▲2二飛成。
いずれも先手優勢となります。
実戦は▲3一角に△5二玉▲2二角成(!)△2八角成▲3二馬と進展。
難解ながら、攻めている先手がやや有利な形勢です。
第4問は、珍しい千日手筋を。
二次予選 ▲Honey Waffle-△名人コブラ
後手番です。
ヒント:異筋の攻めと異筋の受け
後手は穴熊ながら、先手が先に攻めていて、高美濃も健在。
一見すると先手有利ですが、先手陣に弱点がありました。
それを咎めた一着です。
どちらも決勝リーグに進出した強豪ソフト同士の対戦。
Honey Waffleはソフトでは非常に珍しい振り飛車党です。
きれいな振り飛車を指すので、振り飛車党の方のお手本になります。
正解:△1四香
▲同香は△同歩で、△1六桂が厳しく残ります。
そこで先手は▲1八香打と受けました。
以下△同香成▲同香と進み、後手が△1四香と打てば▲1九香で同じ局面に。
見たことのない千日手の筋です。
実戦は何度も香打ちが出つつも千日手にはならず、大熱戦の末に後手が勝ちました。
ソフト同士の対局は、見たことのない手が生じてハラハラドキドキさせられます。
2問目はリアルタイムに解説をしていたので、一番印象に残る一手でした。
飛車を詰ます問題集があるそうです。
この本に掲載されてもおかしくない一手ですね。
また機を見て決勝リーグからも次の一手を出題したいと思います。
それではまた