将棋棋士 遠山雄亮のファニースペース

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コンピュータを活かした将棋の勉強法

先日の佐藤紳六段戦。横歩取りの序盤で前例の無い手を指されました。その手は感想戦によるとソフトに指された手ということ。

ここ数年はコンピュータを活かして将棋の勉強をしていることもあり、その手に対してソフトならこう指しそうだな、とすぐに思いついた手があります。しかしその手は人間的には拒否反応を示す手で、結局指さずじまいでした。

帰宅してから検討させると、予想通りソフトはその手を示します。

その手を指せば良くなるというわけではないのですが、読み筋を見るとその手以外では評価値を落とす(形勢を損ねる)と判断します。

 

この佐藤六段戦はこちらに大きなミスが無かったにもかかわらず、ノーチャンスと言ってもいい内容でした。

この場面でソフト寄りの手を指す(そしてその方向に行く)方が勝つチャンスが多かったのかもしれません。

 

ある場面で手に迷った時、ソフトならどう指すか、ということをまず念頭に置いています。ただ自分(人間的な考え)とソフトの考えで大きく差が出た時に、ソフトの考えに委ねた指し方は出来ていません。新しいものには拒否反応がつきまとうので、なかなか踏ん切りがつきません。

 

将棋ソフトが進化し、練習段階で取り入れているプロは多くなっていると思われます。しかしソフトをどう活かして強くなるかは本当に難しい問題です。時折コンピュータを活かした勉強法をメインにしているプロと話すのですが、皆さん試行錯誤という言葉がピッタリです。

 

誤解されがちなのは、研究でソフトに妙手を見つけさせて勝つ、という活かし方。

たしかにツツカナ新手とかGPS新手と呼ばれるような面白い手を研究段階で示されることはあります。

しかし将棋は果てしなく深くて広いので、そんな手は砂漠で拾う一片の石のようなもの。勝ちに直接つながる可能性は低いです。定跡の進化にはつながりますし、現に影響を与えつつありますが、個人でみると勝ちにつながらない上に、根本的に棋力を向上させる方法とは言いがたいです。

 

使い方が確立されるまでは旧来の勉強法の方が率が良いと思ったりもしますが、先進的な分野に飛び込みたくなる性分なのでこればかりは仕方ありません。また今の自分は皆と同じようにやっていたらダメ、という考えもあります。

これからもしばらくは、コンピュータを活かしてどう強くなるかが将棋の勉強の最も大きなテーマとなりそうです。

 

 

それではまた